タイのノンカイ(ノンカーイ)からラオスへの陸路国境越え(2000年夏)
「これが正しい海外個人旅行」( http://homepage3.nifty.com/worldtraveller/book/treasure2.htm )より、一部抜粋。

(バンコクホアランポーン中央駅で列車に乗り込んだあと…)
僕の席は19号車の3番シート、二人部屋の上段のベッドだ。
出発間際に飛び込んできたのは、ちょっと太った中国系のタイ人ビジネスマンだった。
東南アジア中で服を作らせている会社に勤めているそうで、今回は、ラオスのビエンチャンで翌日早くに打ち合わせがあるのだとか。
僕は、ラオスへ観光に行くと自己紹介して、ビジネスマンに「あなたは、将来は自分の会社を作って、大金持になるんでしょうねー!」と、愛想良く話をする。
これは、二人きりでおなじコンパートメントに寝るのに、相手を知らないままだと、キモチヨクないからだね。
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ノンカーイの駅に着くのは、少し徐行したせいか、一時間ほど遅くなって午前10時ごろになった。
ビジネスマンが僕に「ラオスのビザは持っていますか?」と尋ねる。
「国境でビザが取れると聞いたので、持ってません」と答える。
ビジネスマンは、ノンカーイの旅行代理店に連絡してあって、彼のビザはそこでもらえることになっている。
僕もその代理店でビザを取っていったらいい、と親切に教えてくれる。
旅行代理店は国境へのバスターミナルのすぐ横にあるという。
彼はこのまますぐにラオスへ向かうようだ。
それなら彼にくっついて、そのバスターミナルへ一緒に行けばいい!とひらめく。
「僕もあなたといっしょに行きます!」と、彼にくっつくことを宣言する。
これが僕の得意な、非常に高度な旅行テクニック「コバンザメ式旅行法」だ。
誰かの旅にくっついて、相手をとことん利用してしまう、骨までしゃぶり尽くすという噂の、恐ろしい旅行秘術なのだ。
ノンカーイの駅は、町から離れて、まわりには何にもなく、ただ駅だけが、ぽつんと立っていた。
僕はビジネスマンの後について、彼に値段の交渉を任せ、ビジネスマンと同じ車に乗り込む。
「いくらですか?」と聞くと、「一人20バーツ。外国人一人なら50バーツ取られるよ」とビジネスマンが答える。
5分もたたずバスターミナルへ到着し、ビジネスマンがビザを手にするのを少し待つ。
「君も国境でビザが取れなければ、ここに来たらいいから」とアドバイスをくれる。
国境行きのバスは一人10バーツで、人が集まり次第すぐに出発だ。
バスがターミナルを出てすぐ、メコン川の手前に、タイ側のイミグレーション(出入国管理事務所)があった。バスを降りて、出国審査の列に並び、パスポートにタイの出国印をもらう。
出国審査の時、日本人の旅行者を見つけたので、ラオスのビザのことを聞くと、彼はカオサンで用意してきたとのこと。
しかし、国境で取れるものを、なぜわざわざカオサンで取ってきたのだろう?
状況が変わったのだろうか?もちろん国境越えの条件なんて、すぐに、あっさりと、理由もなく、変更されるものだが。
彼も「さっきのバスターミナルの横の旅行代理店でもビザが取れるみたいですよ」と、親切に教えてくれる。
でも、ラオスのイミグレーションで、その場でビザが取れるはずなのだ。国境で取れるなら、なぜ、国境の町ノンカーイでビザを発行する商売が成り立っているのだろう?
やはり国境でその場でビザは取れないのかしら?
まあ、ビザが取れなければ、取れないだけの話だが、できるなら取れた方がキモチイイよね。
9:国境を越える真の楽しみとは?
タイ側のイミグレーションで、僕はタイに入国するときにパスポートにくっつけられていた、タイの出国カードを外され、入国印の横にポンとタイの出国印をもらった。
僕のパスポートは、パスポートを作ったときに増補手続きがしてあって、通常のパスポートの48ページに、さらに24ページ増やしてあるのだが、それでも、もうほとんど空きスペースがない。
タイの入国と出国スタンプは、その隙間を見つけて、イギリスへの入国スタンプ、フィンランドの入国スタンプのある8ページ目に押された。
これを僕は「8ページ目にタイの出国スタンプがありますよー♪」と覚える。
なぜかというと、ラオスの入国の時に、タイの出国スタンプをチェックするからだ。
しかし、僕の膨大なスタンプをいちいち見てタイの出国スタンプを捜していったら、大変な手間がかかる。
そのときに、「タイの出国スタンプは8ページ目にあります」と教えてあげる。
こういう細かな心遣い、これが世界中すべての国境を無事に越えてきた、世界旅行者のすごいところなんだよね。
タイの出国審査は簡単に終了し、バスに戻ったら、またバス代を取られそうになったが、バス代の領収証を見せて、また同じバスに乗り込んだ。
バスは国境をしょっちゅう行き来しているようなので、別に同じバスに乗る必要もないようだ。
ただ、僕は自分のバックパックを乗せたままだったので、それで同じバスでないと困るってわけだ。
バスには新しい乗客が増えたのか、僕の席がなくて、ドアのそばで立ったままになった。
そのままバスは友好橋(Friendship Bridge)を越える。
立ったままなので、メコン川が良く見える。
川幅もたいしたことはないので、あっという間に橋を渡りきり、そこには、ラオスのイミグレーションが出現する。
僕はドアのところに立っていたのを幸いに、さっと先頭で、跳び降りる。
目は鋭く、建物の横に書かれた英文の表示を探す。
ビザが取れるとしたら、ビザの窓口があるはずだ。
なければ、ビザは取れないわけだから。
すると、イミグレーションの建物の左端の窓口に、大きく「ARRIVAL VISA」と書いてあるのを発見する。
その下に、料金30ドルとある。
窓口には、すでに数人が並んでいる。ようし、ビザが取れるのは間違いない。
バンザイ!やった、やった(と、沖縄の踊り「エイサー」を踊り始める)。
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ラオスの場合は、ビザを取ること自体は、カオサンの旅行代理店でも取れるし、ノンカーイでも簡単に取れる。
しかし、簡単に取れるものを簡単に取ってしまっては話のネタにならない。
だから、入国のイミグレーションで、その場でアライバルビザが取れるなら、絶対に入国時に取らなければならない。
というのは、このアライバルビザの制度が、いつなくなってしまうかわからないから。
アライバルビザの制度がなくなってしまったら、泣いて頼んでも、いくら金を積んでも、アライバルビザは取れない。
人の取れないビザを持っているということは、旅行者の間では絶対にエライわけだよ。
普通の人に取っては、そんなことどうでもいいことだけれどね。
付け加えておくと、ビザは、どこで取得したかというのでも、ポイントに差がある。
ブラジルのビザを日本で取ってしまっては、「あー、日本から飛行機で直行したんだね。しょーもない!」と馬鹿にされる。
ブラジルのビザは、その隣国のアルゼンチンや、ボリビアで取らないと自慢にならないのだ。
またベネズエラ旅行と言っても、日本でわざわざビザを取って、飛行機で入ったのでは、「根性なし!」と笑われる。
ベネズエラは、ビザなしで、ツーリストカードで入国できるからだ。
こういう風に、旅行のエラサというのは、その人の持つパスポートに凝縮しているので、パスポートさえ見れば、旅行者のレベルは明々白々にわかることになっている。
成田の税関でも、荷物チェックの係員は、僕のパスポートをぱらぱらめくって、その世界各地のスタンプを見ただけで、最敬礼をして、ノーチェックで通してくれる。
これだけ旅行経験がある人ならば、変なものを持ってくるはずがないと考えるからだ。
というわけで、僕のパスポートは、そのスタンプ一つ一つに念入りな芸がしてあって、パスポートの説明をするだけで、一ヶ月くらいかかる。
まあこれ以上書くと、変な自慢話になってしまうので、自慢話だと誤解されないうちに、適当なところで止めて置こう。
なにしろ僕は、自分のすごい旅行歴を一度も自慢したことがないというのが、自慢なのだから。
ビザを取りに窓口に行くと、窓口の中で数人の係員がビザの手続きをしているのが外から見える。
しかし、窓口の前には、ビザの申請書類がないよ。
申請書類がなければ、ビザは取れないじゃないか!どこだ!どこに申請書はあるのだ??
10:アライバルビザは取ったが、次の問題が
一体全体、ビザの窓口にビザの申請書類が置いてないという事があるだろうか?
もちろんあるんだよ。
だって、世の中は、本当に何が起こるかわからないんだからね。
世界旅行者が普通の人間と違うのは「世の中ではなんでもアリ」だと認識しているってことなんだ。
だから国境のビザ発行窓口の前に、ビザの申請書がないと思っても、びっくりしたりはしない。
「困ったなー。泣いちゃおうかな…」と思うだけだ。
まあ、困ったときには、そこにいる人たちに、聞けばいいだけだ。
並んでいる人に、「ここでアライバルビザが取れますよね」続いて、「それで、ビザの申請書はどこにあるか、ご存知ですか?」と礼儀正しく聞いた。
すると、「ほら、ここにあるよ」と、オーストラリア訛りの白人男性が大きな身体をずらすと、そこにビザ申請書の入った低いトレイがあった。
なんだ、ビザ申請書は、ビザ申請の窓口の前にあったんだよ。
ただ、人の身体の陰に隠れていただけなんだ。
このように、旅先で迷ったら、一人で悩まず、人に聞けばほとんどは解決する。
だから逆に、ガイドブックはない方がいいんだよね。
ガイドブックがあると、現地の人に尋ねたりせず、ガイドブックに頼ってしまうからね。
ところで、ビザの申請書などは、僕は目をつぶっていても書ける。
アドバイスしておくが、こういうところで自分のパスポートを取り出して、パスポートナンバーや発行日などをいちいち確認するようでは、旅行者としてはまだまだだ。
申請書に気を取られていると、パスポートを置き忘れたり盗まれたりする。
パスポートの内容、パスポート番号や発行日、有効期限などは別に控えておくこと。
またその程度のことは、暗記していたほうがいい。
申請書に記入していて、一つちょっと迷ったところがあった。
それは、入国地点とあるところに、何と書いたらいいか、わからなかったのだ。
ただ、こういう部分は、適当に書いても、今まで問題になることはなかった。
それは、入国書類を出したところから入国するに決まっているので、何と書いてあろうと、誰だってわかっているからだ。
僕は一応「ノンカーイ」と書いた(発行されたビザを見ると、正式には「Friendship Bridge」となるようだ)。
書類を作成して、パスポートサイズ(5cm×5cm)の写真を一枚つける。
この写真は、かなり昔にナイロビの写真館で撮ってもらったものだ。
海外では日本のように「6ヶ月以内に取った写真」などとお馬鹿なことは言わないので、古い写真でも大丈夫だ。
要求される写真の大きさが小さく指定されている場合もあるが、その時は、向こうがハサミでカットしてくれるので、気にすることはない。
それからきっちりと、30ドルのキャッシュ。
海外でビザの申請をする場合、手数料はドルのキャッシュという場合が多いので、ドルのキャッシュは、お釣が要らないよう、切りよく払えるように用意しておくのも、旅行者としての常識だ。
しかし、ここでは、タイバーツでも支払可能で、その場合、1300バーツと言われていた。
30ドルが1200バーツ弱のレートなので、1300バーツだと少し損をすることになる。常にドルキャッシュを持っているのが大切なのが、ここでもわかるだろう。
ビザの申請を終えて、窓口で待っていると、別の書類を持っている人を見掛ける。
そうだ、ビザの次には、出入国の書類を書き込まなければ!
その出入国の書類は、イミグレーションオフィスの建物とは別に、屋外にカウンターがあって、そこで配っている。
ビザの発行を待ちながら、すらすらと書き込んでいく。
入国書類には、ビザの番号を書き込むところがあるので、ビザをもらうまでは、完成しない。
書類にはラオス国内での住所を記入するようになっている。
これは、ただホテルとだけ書いてもいいのだが、時間もあることだし、どこかホテルの名前を書いておきたい。
というのは、書類というのは建前を書くわけで、入国審査官はお役人様だ。
つまり、泊る泊らないは別にして、入国審査官というお役人様の手数をわずらわせないように、一般庶民が努力をしておくと、その努力を認めて、すんなりと入国させていただけることになる。
ここで下手に友人の住所などが書いてある場合、入国審査官も「この人とはどういう関係なのだ?」と聞かないわけにはいかない。
役人というのは、基本的に仕事をしたくないものだから、こういう無駄な仕事をさせてしまうと、気分を害し、いろいろと文句を付けられることになる。
アメリカなどに入国する場合、友達のいない人間に限って、アメリカの滞在場所というところに、無理に友人の名前を書いたりするが、これは止めた方がいい。
特に日本人女性がアメリカ人男性の住所などを書くと、とたんに結婚目的と疑われて、入国を拒否される場合もある。
だから、滞在場所にはホテルの名前を書いておけばいい。
空欄にしていて、どこに泊るのだと聞かれて、これをまた正直に「まだ決めてません」などと返事すると、わざわざホテルを予約してくれたりする。
僕の友人は、どう見ても貧乏そのものだったが、入国審査官にヒルトンホテルを予約させられてしまった。
これは、正直、親切でやっているのではなくて、意地悪でやっているので、とにかく入国審査官の気分を害さないように、一般庶民としては、精一杯の努力はしておかなければならない。
僕は近くにいた旅行者の持っていたガイドブックを見せてもらい、適当なホテルの名前を書き込んだ。これが「Huo Guo Guest House」というところだ。
ビザ窓口で、すんなりと15日間有効のビザをもらう。
ビザにははっきりと「VISA ON ARRIVAL」と書いてある。
よしよし、これで一つまた、話のネタが出来たぞ。
次にビザ番号を入国書類に書き込む。これで、あとは、入国審査を受ければいいだけだ。
ゆっくりと入国審査の窓口へと、歩を進める。
ビザ申請窓口の隣、入国審査の前に、税関があって、荷物のチェックをしている。
そうだ、僕の荷物はどこだったっけ、バックパックを持ってこなければ、と思ってあたりを見ると、乗ってきたバスがどこにもない。
しまった!僕はバックパックを、バスの中に置きっぱなしにして、急いで降りてきてしまったのだ!
(まだまだ続きますが、それは「これが正しい海外個人旅行」を読んでね。)
【写真】国境のメコン川にかかる友好橋
【旅行哲学】陸路国境越えこそ海外旅行の究極の楽しみだ。
注)「メコンを越えてラオスへ」 http://homepage3.nifty.com/worldtraveller/laos/laosinde.htm