オリエンタルホテル@バンコク/タイ

1980年代の初め、世界旅行者は、バンコク経由でカトマンドゥ(ネパール)に入って、帰りはなんと、スリランカのコロンボから、またバンコク経由で戻ってくるという恐ろしい切符を東京で手配していた。
それまで本格的なバックパッカー旅行をしたことがなかったので、このインド旅行については、出発前にはかなり恐れていた。
今でも使っている「Wilderness Experience」のバックパック自体が、この旅に出る前に池袋の西武百貨店で購入したものだったしね。
ここで、世界旅行者が普通のバックパッカーと違うところをはっきりさせておこう。
普通の旅行者は、若いときのバックパッカー旅行から、就職し金ができて、パック旅行、個人手配旅行(FIT)と旅のやり方が自然と金のかかる方に上昇していく。
ところが世界旅行者は、最初が個人手配旅行、パック旅行、となって、バックパッカー旅行と、だんだんレベルが下がっていったんだよ(涙)。
ネパールから、インドに入って、さらにスリランカと、どんどん旅をしているうちに、どんな汚い宿でも平気になってしまった。
だから、予定したよりも旅が安くついて(つまり、とっても面白くって)、その上、かなりお金が残っている。
帰りの航空券には予約が入っている。
金もあることだし、帰国を延ばそうと考えたが、予約が入らない。
すると世界旅行者は、「なにかバンコクでも派手なことをしたいなー」と考え出す。
金があって、バンコクで過ごす時間がない。
それならば、普通の日本人は女を買うわけだが、僕は金で女を買うのが一番嫌いだ。
金で女を買うのでは、自分のレベルが低いってことだからね。
僕は昔から、女に金を払ってもらうのが当然と考えている、恐ろしい人間なんだよ。
タイの物価はそのころメチャ安かったので、食事をしてもたいした金は使えない。
また、僕は食事自体にもあんまり興味がないんだ。
そこで思いついたのが、そのころ世界五大ホテルの一つといわれていた「オリエンタルホテル」に泊まること。
電話をかけてシングルルームの予約をする。
これが、そのころで、1泊3万5千円した。
これはあまりに高価だったのではっきりと記憶に残っている。
そのころ泊まっていたのがどこか記憶がない。
多分、3千円程度のマレーシアホテルだったのではないかな。
ホテルから出て、道を走っているタクシーに乗り込んだ。
そのころは、日本人がタイへ行くという意味は、「買春するため」これが基本だったよ。
だから、タクシーの運ちゃんは、日本人の僕に、いろんなマッサージパーラーのパンフレットを見せてくれる。
それを適当に流して、安っぽいタクシーはオリエンタルホテルへと突入する。
僕はウザッタイタクシーの運転手を振り払って、とっととオリエンタルホテルのレセプションへと進む。
(今はそんなことはないかもしれないが)そのころ、バンコクのオリエンタルホテルは世界の五大ホテルのひとつと言われるくらいの、一流ホテルだった。
ホテルのレセプションには、ものすごくきれいな英語を使う美男子がいた。
僕の汚い服装と、バックパックを見ても、眉一つ動かさない。
これが本当の一流ホテルだね。
人を服装や人種で差別しない。
だって、一流ホテルにはどんな人が泊まるかわからないからね。
一流のホテルに泊まる人は、服装がどんなでも一流の人間として、取り扱うわけだ。
僕は予約をしていることを告げて、鍵を受け取り、カードで支払うことを告げる。
スムーズにチェックインが進むのに、タクシーの運転手が付きまとって離れない。
僕は、「さっきの女の話だろう」と、敢えて無視していた。
運転手はまとわり付いた上に、レセプションの美男子に、タイ語で何かを訴える。
レセプションの美男子のタイ人が、「こちらはどういう関係ですか?」ときれいな英語で、僕に聞く。
僕は「ここまで乗ってきたタクシーの運転手だよ。気にしなくていいよ!」と言う。
すると、受付の美男子が僕に言ったよ。
「タクシーの運転手は、料金をもらってないと言ってますが…」
慌ててタクシーから飛び出したので、タクシー料金を払うのを忘れていたんだ。
まあ、この時は、かなり焦ったね。
だから、運転手さんに、チップも弾んだと思う。
部屋に案内する係りのタイ人がまたすごかった。
このタイ人も、ものすごくきれいな英語をしゃべったんだ(汗)。
案内の仕方もきれいで、確実に英国留学した感じだった。
僕は彼と一緒にいて、緊張したからね。
オリエンタルホテルの新館のチャオプラヤー川を見おろす、広い部屋に案内された。
この広さといったらだね、バスルームだけで8畳ぐらいあったよ。
緊張していたのでチップもちゃんと払って、ゆっくりと部屋をチェックした。
もちろんチップを多めに払った。
日本人は、「どういうときにチップを払ったらいいか?」とよく考える。
でも、実は、悩む必要はない。
チップを払わなければならない場合は、チップを払うような雰囲気になってしまうんだから。
とてもステキな部屋で、さすが1泊3万5千円だと思う。
ところが、バスルームで便器みたいなものを2つ見つけた。
一つは普通の洋式便器だ。
ただ、その隣にもう一つ便器のようなものがある。
で、ボタンを押すと、真上にシャワーが飛び出す。
なにかわからないが、日本では真上にシャワーが出る場合、それは、プールの目を洗うものか、のどを洗うものか。
というので、目と喉を洗ってみた。
しかし、ちょっとおかしい。
そこで、京都大学卒業の世界旅行者の膨大な知識をスキャンする。
結論は「これはひょっとして、噂に聞いたことがあるビデというものではないかな?」となる。
ビデとは、男女の性器を洗うものだ。
特にフランスでは、セックスの前にシャワーを浴びて、体臭を洗い流すみたいな無粋なことはしないで、性器だけを洗うと聞いていた。
というので改めて、水を噴射させて、写真を何枚も取りました。
せっかくだから、お尻もチンコも洗いました。
でも、フランスやイタリアへ行ったら、どんなセコイホテルでも、部屋にビデだけはあったから、特に珍しくもなかったわけだけどね。
【写真】オリエンタルホテル
【旅行哲学】あるところでは珍しくても、別のところへ行ったらありふれているってことあるよね。
この話 http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20060510
