佐藤晃の日本海軍悪玉論の本
太平洋に消えた勝機(佐藤晃)
【感想】

佐藤晃氏の一連の著作を読んで、大東亜戦争の実像を理解して、改めて、僕は日本人に絶望した。
日本人には、戦略的な考え方ができない。

海軍は自分たちの権力を守るために、米国海軍を仮想敵に設定した。
でも、実際に戦う気はなかった。

ただ、自分たちの権力守り、出世をするために、海軍を利用しただけだ。
だから、実際の戦争になったら、どうしたらいいか考えることができなかった。

実際の戦争は、ワンショットライターの陸上攻撃機に任せて、自分たちは軍艦の上でいい飯を食って、海軍高級軍人専用の芸者とセックスしていただけだ。
これは、現在の公務員にも通じるね。

いや、日本のサッカー選手の考え方も、一緒だよ。
ということは、日本人はもともとダメなんだよ。

日本人は頭がないので、ただ一生懸命私生活を犠牲にして、死ぬまで働く以外にできない。
これが特攻隊なんだよなー(涙)。
「戦略大東亜戦争」佐藤晃著
佐藤晃氏の「帝国海軍悪玉論」は、1996年の「戦略大東亜戦争」から始まったのではないかな。
ただこの「戦略大東亜戦争」に限っては、著者の思い入れがあるのだろうか、ビルマ戦に多くのページを割いている。

第15軍の牟田口廉也のインパール作戦を、あと一歩で成功したとして、評価している。
そして、「インパール作戦が批判されるのは、大東亜戦争で陸軍だけで負けた唯一の作戦だったからだ」という指摘も、納得できる。

日本はマリアナ諸島で持久体制をとり、重慶の国民党政府への補給を断ち、ビルマからインドへともっと早期に進攻していればよかった。
チャンドラボースのインド国民軍をインパールに入れて、独立インドを成立させ、インド洋の連合軍補給ルートを断つことで、ドイツのロンメル将軍のエジプト進攻を助ければ、枢軸国は勝利していた可能性がある。

大胆かつ、刺激的な議論を提供している。
2006年に「帝国海軍が日本を破滅させた」上下巻を出版したが、その主張が社会にある程度受け入れられるまで、10年かかったわけだ。
だって、僕も今年まで佐藤晃氏のことを知らなかったからね。

注:

ところが「戦略大東亜戦争」の著者紹介によると、佐藤氏はその前に、同じく戦史刊行会から「帝国海軍の誤算と欺瞞」という本を出しいているようだ。
この本は、アマゾンでも引っかからない。
いざとなれば、国会図書館で読むか。
帝国海軍が日本を破滅させた(上) Incompetent Japanese Imperial Navy
帝国海軍が日本を破滅させた(下) Incompetent Japanese Imperial Navy
帝国海軍「失敗」の研究
大東亜戦争「敗因」の検証―「帝国海軍善玉論」の虚像


いやー、数々の戦記を読みまくっていた僕が、なんとなくずーっと不思議に思っていたことが、佐藤晃氏の本ですべて解決された。
つまり、帝国海軍は全くの無能だった。

兵站も考えず、情報も考えず、戦果の確認はいい加減で常に誇大発表。
ミッドウェー海戦の敗北も隠蔽。

台湾沖航空戦の大戦果が嘘だとわかっても、隠蔽。
ソロモンでの大戦果も、嘘だらけ。

しかも、自分でも戦果を信じていた。
マリアナの要塞化も米軍が来るまで、全く手をつけず。

潜水艦による通商破壊作戦もしない(またこの潜水艦の航行時の騒音が激しくてバレバレだったとか)。
航空兵の養成もぎりぎりまで手をつけない。

米軍の航空母艦が太平洋に存在しない時期も、動かない。
ちょっと戦うと、勝っていてもすぐに逃げ出すので戦果を拡大できない。

反省もなく、いつも同じ戦法しか使わないので、米軍にはミエミエ。
しかも、1942年10月の南太平洋海戦(1942/10/26)から、1944年6月のマリアナ沖海戦まで、1年8か月間、連合艦隊はなにもせず遊んでいた。

結局、帝国海軍というのは、ただ予算をたくさん取って、軍艦を作って、自分たちの出世のポストを作るだけの典型的な官僚集団だったわけだ。
航空特攻や大和の沖縄出撃は、結局、海軍官僚の弁解のためなんだ。

特攻もせず、大和を持ったまま戦争に負けていたら、日本国民の怒りは帝国海軍に向かっただろうからね。
それを避けるために、特攻でごまかしたわけだ。

帝国海軍の官僚の言い訳のために、特攻隊は使われたんだよ。