スペースボール/Spaceballs (1987) @HBOの入ったモーテル/フラッグスタッフ/アリゾナ州
エルパソを午後5時半に出て、ゆったりとバスの振動に身を任せる。
グレイハウンドのパスを使って毎日移動を続けていると、このバスの振動に慣れてしまって、自然と眠くなってしまう。

身体がグレイハウンドと一体化してしまったんだよ。
グレイハウンドのバスに乗って、シートに座ると、安心感が身体の隅々まで染み渡る。
今までの経験で、グレイハウンドを完全に信頼しているからね。

ちょっと寝たり、ふと目が覚めて時計を見たりしているうちに、道路の周囲が白くなっているのに気がつく。
雪が降っているんだ。

僕がこの旅をしたのは、なにしろ1988年の12月だからね。
そりゃアメリカ南部でも標高が高くなれば、雪も降るさ。

雪のせいか、いつもは到着予定時間よりも早く到着するグレイハウンドが送れてしまった。
アルバカーキ到着予定は深夜の12時10分なのだが、12時45分と30分ほど遅れてしまったんだ。

でも、僕はアルバカーキを午前2時に出発するバスに乗り継ぐだけだから、全く問題はない。
アルバカーキのバスディポの待合室で、日本人旅行者2人と会う。

1980年代の日本人のアメリカ旅行は、だいたいはグレイハウンドを使っていたものだ。
だから、この時代は、どこへ行っても何かしら面白そうな日本人に出会えて話せたのが面白かったんだよね。

このうちの1人は、なんでもアメリカ一周のバイク旅行のツアーに参加するために、これからデンバーへ行くそうだ。
米国の大平原を大型バイクでぶっ飛ばす、これも気持ちいいだろうね♪

午前2時出発のバスが遅れたが、何とか乗り込んだ。
あとは寝るだけだ。

そのまま走っていったが、途中でかなり停止したりしていた。
雪のせいで、かなり遅れているのは実感できる。

本来はフラッグスタッフに午前8時半に到着予定だ。
うまく8時半に着けば、バスディポから午前9時のグランドキャニオン行きのバスに乗って、午前10時45分にグランドキャニオンへ到着する。

しかし、出発が遅れた上に、夜目にも白い雪が降り続いている。
「遅れるかな…」と覚悟する。
だって、乗り継ぎがたった30分なのだから、すでに無理な感じがするしね。

というわけで、心配したとおり、到着は見事に10時半になってしまった(涙)。
グランドキャニオンへのバスは、9時に出発してしまっている。

ということは、貧乏な世界旅行者が今日グランドキャニオンへ行くのは不可能だ。
明日行くことにする。

バスで一晩過ごしたわけだし、身体も疲れているので、とにかく休むところを見つけることになる。
まあだいたい、バスディポの近くには、安い宿があるものなんだよ。

バスディポのそばをうろうろすると、国道沿いにモーテルが並んでいるのがわかる。
モーテルといってももちろん、日本のような、車で利用するラブホテルではなくて、普通の、本来の意味の車で横付けできる安い宿だ。

バスディポのすぐ横の、「HBO」という看板を出していた「Starlite Motel」に泊まることに決定。
HBOとは、米国の映画チャンネルなので、一日映画見放題ってことなんだよね(笑)。

米国のモーテルは部屋が大きいのが特徴、そのツィンルームで21.70ドルだ。
このモーテルから、グランドキャニオンの有名な宿「Bright Angel Lodge」へ予約しようと、電話をかけた。

すると、ブライトエンジェルロッジは、満室だという話。
他のロッジも最低50ドルはかかるということだ。

(今はビックリしないが)そのころは、「1泊50ドルは絶対払えない」と、絶望感に襲われたね。
しかもその電話代が、1.85ドルプラス15セントかかったので、さらにうんざりする。

ボーッとしたまとまりのつかない頭で、モーテルの部屋でHBOの映画を見る。
これがMel Brooks「Space Balls」という「スターウォーズ」や「猿の惑星」のパロディ映画で、疲れた頭にはちょうどいい。
大笑いしていた。

午後にひと眠りをして、ちょっと元気が出たので、夕食を探しに出かける。
このフラッグスタッフの国道沿いは、早い話、ファーストフードチェーンの展示場みたいなものだよ。

バーガーキング、ウェンディーズ、マクドナルド、、、。
でもハンバーガーを食べる気にはならない。

道路沿いには、いろん店がズラずらっと並んでいる。
これはもちろん、車で来る観光客向けの店なんだ。

そこをずんずん歩いていると、ピザハットを発見。
ここでピザを買って、途中の酒屋で白ワインを購入する。
白ワイン一本では物足りないから、クアーズ(Coors)の6パックも買ったよ。

世界旅行者が世界中を旅行していたときは、ピザと白ワインで最高の夕食だったんだよね。
しかし、買った白ワインは冷えてなかった。
冷えてない白ワインは、つまらない。

そこでどうしたと思う?
この12月のフラッグスタッフには、雪が積もっていたんだ。

だから、世界旅行者は道端に積もった雪を集めて、プラスティックバッグに詰めて持って帰った。
その雪を流しに詰めて、その中に白ワインのボトルを突っ込んで冷やしたんだ。

その夜は、モーテルの大きなベッドで、HBOを見ながら、お酒を飲んで、たらーんと過ごしたね(笑)。

さて明日は、グランドキャニオンだ。

【写真】フラッグスタッフの道路沿いのファーストフード
【旅行哲学】旅では、とにかく寝るところがあって、食い物があればそれでいい。