アララット山/トルコ

タブリーズを出て、国境近くのマークーという、両側に崖の迫った、ちょっと変わった町を通り過ぎずに、わざわざ一泊した。
翌朝一番でイランからトルコへと国境を超えて、その日のうちに、できるだけトルコへ深く入りたかったからだ。
もちろん、「移動は朝早く、ホテルを見つけるのは、午後の早いうち」というのが海外個人旅行の鉄則だからね。
朝のマークーの通りにはひっきりなしに、国境行きの乗合タクシーが走っている。
席の空いているタクシーを見つけて乗り込むと、運転手は何も聞かず、国境地帯のゲート前まですんなり行ってくれた。
そのとき前方に高い山が見えた。
「ひょっとして、あれがノアの箱舟が洪水の後でたどり着いたという、あのアララット山かしらん…」と思って、運転手に「アララット?」と聞いても、ニヤニヤと笑うだけだ。
何を聞いているのか、わからないのだろう。
それに「アララット」というのは、外国人がそう呼んでいるだけで、現地では別の名前かもしれないしね。
山の姿は、国境の手前でもなかなかきれいに見えたのだが、国境地帯で写真を取るのは海外旅行ではトラブルの元。
それより以前に、僕はイランからトルコへの国境越えの手続きがわからず、心配してて、写真なんか考えるひまがなかった。
山の上にある国境で、いろいろネタになる♪大変な思いをしてイランを出国すると、トルコ国境はとても簡単。
で、国境をぬけてすぐに考えることは、もちろん「ビールを飲むこと」だよね。
なにしろ、パキスタンからイランを旅行していた間は、パキスタンのフンザでワイン、ペシャワールの高級ホテルでビールを飲んだ以外は、まったくアルコールを口にしてなかったんだから。
で、缶ビールをくーっと飲んで、トルコ側のゲートをふらふらと抜けると、そこにはマイクロバスが待っていた。
国境を越えた人を、近くの町まで連れて行く専用のバスだ。
当然僕は、さっさと乗り込み、すんなりと(名前は思い出したら書くけど)町に着き、そこでワン湖の湖岸にあるワン(VAN)という町へのバスの切符を買う。
ちょっと時間があるので、食事をした後で思い出した。
「おいおい、肝心なアララット山の写真を撮ってないよ!」
そこで、町のはずれまで歩いていって、建物が入らないような場所を選んで、アララット山の写真を撮ってみた。
でも、あまりに遠く離れて、ほとんど写ってなかったよ(涙)。
いまさら国境へ戻るわけにも行かず、これって、ちょっと残念だったよね。
【写真】小さくて、かすかで、見えないと思うけれど、一応「アララット山」の写真。
【旅行哲学】撮りたい写真はすぐに撮らないと、チャンスは戻らない。