エマームモスク@エマーム広場/イスファハン/イラン

「イスファハンは世界の半分である(Esfahan is half the world)」と呼ばれた16世紀のこの町の繁栄を表した言葉だという。
ここでも世界旅行者は、「あり得ない」経験をしてしまった…。

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「間違いだらけの海外個人旅行」より

1999年にアジアを横断している途中、パキスタンから炎熱の砂漠をバスでイランに入った。
さらに、バスを乗り継いで、イスファハンに着き、イラン観光の白眉、エマーム広場に歩いた。
マスジェデエマーム(エマーム寺院)で、お祈りが始まろうとしていた。
特別な日らしく、多くの人が集まっている。
僕は観光客として、お祈りの時間に入るのを遠慮して、モスクの外に座っていた。
すると、モスクの関係者らしい人が、英語で声をかけてきた。
「入りたいなら、荷物を事務所で預かってあげますよ」と、親切だ。
普段は外国人は入場料を払わなければならないらしいが、その日は特別で、払う必要がないとのこと。
僕は、モスクの向かって右側の事務所で、ディバッグを預けようとして、ちょっと迷った。
昨日100ドルを闇両替していて、90万リアル、一万リアル札90枚の束がそのまま、バッグに入っているのだ。
ただ、札束はノートの間に挟んであって、ちょっと見ただけではわからない。
ここで、もちろんバッグに鍵をかけることは出来る。
博物館でデイバッグを預けるなら、当然そうする。
しかし、宗教国家の宗教施設の宗教関係者のいる、きちんとした荷物預かり所で、髭を生やして貫禄のある人が何人もいるところで、わざわざ南京錠を掛けるのは、さすがの僕も、出来なかった。
親切にしてくれているのに、目の前でバッグに鍵を掛けるのでは、「信じてませんよ」と言っているみたいなものだ。
一瞬強く迷ったが、鍵を掛けないまま、バッグを預けてしまった。
モスクの中を見学しているときも、なんとなく不安だった。
見学が終わって、バッグをもらって、外へ出て、ちらっとバッグの中を見ると、札束は無事だ。
やはり宗教関係者は信じれると思ったが、ホテルへ戻って確かめてみると、札束は半分にやせ細っていた。
アラーの神はこのようにして、僕に「絶対に誰も信じてはいけない。宗教関係者でも」と、僕に教えてくれたんだ。
まあ、ちょっと高い教訓だったけれどね。

「間違いだらけの海外個人旅行」
第一章「海外旅行は嘘だらけ」第三項「話しかけてくるのは泥棒か詐欺師だけ」
【参照】「間違いだらけの海外個人旅行」 文庫版「間違いだらけの海外個人旅行」
【写真】エマーム広場のエマーム寺院
【旅行哲学】宗教関係者も金には弱い。