カオサンで女子大生さんと
これが正しい海外個人旅行より「メコンを越えてラオスへ」から
機内で隣に、若くてきれいな女の子が座ったからと、すぐに喜んで、話し掛けて、口説いたり、シモネタを飛ばしたり、身体をなでまわしたりしてはいけない。
現在ではこういう迷惑なお客さまは、すぐに手錠を掛けられて、拘束衣を着せられて、パラシュートも付けないまま、飛行機の非常口から放り出されることになっている。
しかし、こういう風に飛行機から突き落とされても、そのあと誰も苦情を申し立てたりしないので、その乗客も最終的にはこの処置に納得しているものと、世界中の大手民間航空会社の組織IATA(国際民間航空輸送協会)も判断しているとか。
僕は女の子たちを気にしてないフリをして、本を読んだり、メモを付けたりしていた。
飲み物のオーダーに来たので、「ウイスキーはありますか?」と聞いたら、あるという。
以前乗ったパキスタン航空と違って、インドはイスラム国ではないので、機内でもアルコールがでる。
ウイスキーを頼んだら、「ドゥーユーウオントアイス?」と聞かれる。
「イエース!」と答えると、ウイスキーの入ったプラスチックのコップ、水の入ったコップ、氷の入ったコップと3つもくれた。
しかも、たっぷりとウイスキーが山盛りになっている(ただしこのウイスキーの銘柄は聞いたことがないものだったので、多分インド製ウイスキーだと想像される)。
これは、これは、今度の旅行はツイてるぞと、つまみのピーナツをぽりぽりとかじって、ウイスキーを飲むと、ウイスキーの量が多すぎて、ピーナツが足りなくなって、ちょっと寂しい気持ちになる。
実は、ピスタチオやナッツなどのおつまみ各種を出発前日に用意していたのだが、それを家に置き忘れてきたのだ。
隣に座った女の子の一人、ウインドーシートに座った女の子が、僕がピーナツのかけらを拾い集めて舐めているのを見たのか、「トマトプレッツ」をくれた。
誰だって、飛行機の中ではすることもないのだから、隣の席になった人のことが少しは気になっている。
僕はどう考えても、三菱商事のエリートビジネスマンにも見えず、まだまだホームレスとも思えず、訳の分からないおじさんなので、なんにでも興味を持つ若い女性なら、絶対になにかアプローチしてくると、僕はそれを待っていたのだ。
機内で隣の席に座ったら、一応は挨拶をして、ちょっと話をしておくのが礼儀だ。
男性ならば、女性の荷物を荷物棚に上げたりするのも常識。
ただ、最初からあまりにしつこい話は嫌われるので、きっかけを見つけて、軽く互いの旅の話などをしておくといい。
女の子の一人が食べ物をくれたのは「おじさん、なにか話してよ」との意味だ。
いいきっかけが出来た。
食べ物をもらったら、話さないわけにはいかない。
話し掛けて、彼女たちの旅行を聞くと、なんと2泊3日でバンコクの友達に会いに行くのだとか。
彼女たちにとっては海外旅行も、北海道の友達の家に遊びに行く感覚なんだ。
さすがの僕も少し驚いた。
せがまれるままに、旅の話を始める。
問題は、僕は話だしたら止まらないということだが。
僕は次々と、手持ちの旅行ネタを披露する。
まあ普通の人の旅行の話は退屈極まりないが、僕の話はとにかく面白いし量もあるので、バンコクまでの6時間では全然足りない。
女の子達は僕の話に興味を引かれたらしく、僕が話し出して10分もすると、神経を集中して聞き惚れて、シーンとして、死んだように静かになって、硬直していた。
僕はせっかくだからと、続けてバンコク到着まで話しつづけてあげた。

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カオサン通りで僕の名前を大声で呼ぶなんて、いったい誰だろう?
ただ旅先では、思った以上に、一度会った人にまた会うことが多い。

今でも覚えているのが、モロッコのジャフナ広場で話をした田中くんと、半年後にナイロビの安宿リバーハウスで再会したこと。
LAでいっしょだった後藤くんとは、クスコのアルマス広場で3ヶ月後に偶然会い、チリのサンチアゴで別れても、一ヶ月後にブエノスアイレスの日本文化会館でまた出会ってしまった。

まあ、これは旅行ルートや宿が案外と定番化しているからだが。
LAで知り合った女の子から、3〜4年後に、東京は芝増上寺の境内で「あれ、西本さん!」と声を掛けられたこともあるよ。

それはそれとして、声のした方を見ると、昨日エアインディアでいっしょだった美人女子大生の二人だ。
彼女たちと一緒にいるのが、タイ人の美女。
日本の大学のクラスメートだそうだ。

カオサン通りの真ん中に立って、三人と一人ずつ写真を撮る。
ところで、女の子と写真を撮っても、「写真を送るので住所を教えてくれ」などと言うのは、あまりにミエミエなので止めた方がいい。

また出会う運命ならば、いつか出会うだろうさ。
世の中は、できるだけ自分から努力しないでいた方がキモチイイのだ。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20060831