【ジャイプールの24時間制ホテル】
冬の北部インドは一般日本人が想像もできないほどに寒くなる。
僕がいたとき、デリーでは屋外でリキシャーに乗ったまま毛布をかぶって寝ていたリキシャーマンが何人も凍死していたほどだ。

ジャイプールの冬も寒く、もちろん夜明け前が一番冷える。
僕はネパールの首都カトマンドゥのタメル地区で購入したセーターの上にアーミージャケットを着ている。

さて、ジャイプールの駅前で午前4時ごろにトラックから降ろされて、とにかく駅舎内へと入る。
するとそのフロアには…、なんと、インド人の皆様がずらりと横になって寝ている。
足の踏み場は、ま、あったけどさ、でも何十人単位で寝ているんだ。

でもまあ、駅のフロアで寝るくらい、それほどたいした話ではない。
現代日本ではあまりないみたいだけれど、世界中ではよくある話なんだよ。
日本でもつい最近まで、みんな駅のフロアで寝てたものだ。

僕が世界一周をしていた時、ベオグラード(ユーゴスラビア)からブダペスト東駅(ハンガリー)へ深夜到着した時なんか、欧米人旅行者が待合室にびっしり寝ていたこともあるからね。
僕もその時は、アーミージャケットのまま、デイバッグを枕にして横になったものだ。

(その話は http://homepage3.nifty.com/worldtraveller/borders/beograd.htm

日本でも、まだJRが国鉄だった時代、登山やスキーに行くために東京駅のフロアで寝て列車を待つ人たちはたくさんいたものだからね。
そうそうお盆や正月の帰省のために切符を買うときも、座席を取るために駅で寝た人たちも多かったよ。

ただそういうのとは違って、ジャイプールの駅ではみなさん毛布をかぶって、死んだように眠っている。
毎日ここで寝ているのかな。
また、実際、なかには死んでいる人もいるのかもしれない。

夜明け前で、何もすることがないので、僕も寝ることにする。
なにしろこの時期、僕はわざわざ寝袋を持って旅をしてたからね。

寝袋を駅のフロアに置き、その中にもぐりこんで、寝る体制に入る。
するとしばらくして、足を蹴られる。

見ると、リキシャーマンだ。
リキシャーマンは僕をホテルへ連れて行くという。

おそらく今ならば、こんな時間にリキシャーマンと一緒にホテル探しにいこうなんて思わないだろう。
眠らないとしても、明るくなるまで駅の中で待っていた方が、何かと安全だからね。

ただ、このときは寝不足だったし、気持ちがかなりハイになっていた。
「よーし、行ったれ!」という気分だ。

リキシャはジャイプールの夜明け前の闇の中を、突っ走る。
でも、朝の4時ごろにチェックインさせるかな?

1軒目のホテルでは見事に断られた。
2軒目も、リキシャーマンがホテルへ行って、ダメだったと戻ってくる。

こりゃダメだと、あきらめかける。
でもまあ、夜があけるまでの暇つぶしにはなるかと、気楽な感じだった。

しかし、3軒目にホテルが見つかった。
寝るだけでいいので、ベッドがありさえすればそれでいい。

ところで、このホテルでのチェックインの時に、チェックインの時間を書いた。
それで聞くと、このホテルは「24時間制ホテル」なのだそうだ。

つまり、朝5時にチェックインすると、翌朝5時までが1泊と計算されるらしい。
これは、インド特有のものらしいけどね。
でも、だからこそ、こんな早朝にチェックインさせてくれたのだろうけれどさ。

というわけで、世界旅行者は、ま、このインド旅行のころはまだ世界旅行者にはなってなかったわけだが、まずベッドで一眠りする。
それからジャイプールのことは、起きた後で考えることにしました。

(24時間制ホテル)

【旅行哲学】まあ、世の中には24時間制ホテルなんて、わけのわかったような、わからないような、いろんなことがあるものだね。