バンコクからノンカーイへの列車旅行

バンコクからノンカーイの列車の最後尾から取った写真
(世界旅行者みどりのくつしたの第2弾ベストセラー「これが正しい海外個人旅行」の「メコンを越えてラオスへ」から)
僕の乗るのが「エクスプレス69号」だ。
ヨーロッパ式の低いプラットフォームに列車が入ると、僕はすぐに乗り込んで席を確保する。
僕はコンピューターで発券された座席でさえも、早い者勝ち、という感覚がある。
というか予約自体をあまり信用していないのだ。
僕の席は19号車の3番シート、二人部屋の上段のベッドだ。
出発間際に飛び込んできたのは、ちょっと太った中国系のタイ人ビジネスマンだった。
東南アジア中で服を作らせている会社に勤めているそうで、今回は、ラオスのビエンチャンで翌日早くに打ち合わせがあるのだとか。
僕は、ラオスへ観光に行くと自己紹介して、ビジネスマンに「あなたは、将来は自分の会社を作って、大金持になるんでしょうねー!」と、愛想良く話をする。
これは、二人きりでおなじコンパートメントに寝るのに、相手を知らないままだと、キモチヨクないからだね。
列車に乗る利点の一つとして、車両にトイレがついていることがあるが、汚くて使えないような場合も多い。
しかし、さすが一等寝台車には、清潔なタイ式、洋式のトイレのほか、シャワールームまでついていた。
暴飲暴食のせいか、疲れのせいか、年齢のせいか、お腹の調子が悪くなって、なんども、なんども、トイレに行ってしまう。
明け方も、眠い目をこすりながらトイレ通いだ。
ということは、「バスにしなくてよかったー!」ってことだね。
バスだったら、地獄の苦しみを味わっていただろう。
これも、列車にして、しかも、トイレのきれいな一等車にして結果的に正解ということだ。
まあ、こういうふうに、なにごとも、無理矢理に、いい方にいい方に考えるのが、旅をする秘訣だ。
悪い方に考えたら、旅なんかやってられないよ。
翌朝、ベッドが片付いて、窓の外を見ると、家々が半分水没している風景が目に入る。
タイ人ビジネスマンの説明だと「昨日の雨で洪水になった」とのこと。
外はいい天気だが、そういえば、今は雨期なのだ。
ノンカーイの駅に着くのは、少し徐行したせいか、一時間ほど遅くなって午前10時ごろになった。
ビジネスマンが僕に「ラオスのビザは持っていますか?」と尋ねる。
「国境でビザが取れると聞いたので、持ってません」と答える。
ビジネスマンは、ノンカーイの旅行代理店に連絡してあって、彼のビザはそこでもらえることになっている。僕もその代理店でビザを取っていったらいい、と親切に教えてくれる。
旅行代理店は国境へのバスターミナルのすぐ横にあるという。
彼はこのまますぐにラオスへ向かうようだ。
それなら彼にくっついて、そのバスターミナルへ一緒に行けばいい!とひらめく。
「僕もあなたといっしょに行きます!」と、彼にくっつくことを宣言する。
これが僕の得意な、非常に高度な旅行テクニック「コバンザメ式旅行法」だ。
誰かの旅にくっついて、相手をとことん利用してしまう、骨までしゃぶり尽くすという噂の、恐ろしい旅行秘術なのだ。
ノンカーイの駅は、町から離れて、まわりには何にもなく、ただ駅だけが、ぽつんと立っていた。
超小型トラックの荷台に座席を付けた、トゥクトゥクという乗り物が、駅前にワーッと集まっていて、列車から降りた乗客を、運転手がどっと取り囲む。
僕はビジネスマンの後について、彼に値段の交渉を任せ、ビジネスマンと同じ車に乗り込む。
二人を乗せたトゥクトゥクは、すぐに駅を後にして、力いっぱい疾走し始める。他のトゥクトゥクも、客を乗せると、精一杯に走りだす。
まるでトゥクトゥクレースのような感じだ。
「いくらですか?」と聞くと、「一人20バーツ。外国人一人なら50バーツ取られるよ」とビジネスマンが答える。
【写真】バンコクからノンカーイの列車の最後尾から取った写真
【旅行哲学】海外個人旅行の基本は列車の旅
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20070111
