ラッフルズホテル@シンガポール

オーストラリアから、インドネシアの西チモールへ飛び、島伝いに旅をして、最後はバタム島から水中翼船でシンガポール港へと入る。
港からけっこう歩いて、地下鉄の駅を見つけ、中に入ると、すぐに日本女性とわかる旅行者を見た。
なぜ日本人とわかるかというと、とてもきちんとした服を着て、裕福そう、幸せそうだったから。
ロサンジェルスのベバリーセンターで、僕の制服ともいえるジーンズにTシャツ、アーミージャケットでうろついていた時も、日本人の女の子たちを見て、「住む世界が違う」と思ったものだった。
シンガポールは間違いなく清潔なところで、ごみを捨てただけで、すぐに罰金刑が言い渡される。
正確には覚えていないが、ゴミ箱には確か「ゴミの投げ捨ては500シンガポールドルの罰金」と表示してあったような気がする。
ま、この表示や町のきれいさは僕が女の子と籍を入れてしばらくして、ちょっと遅い新婚旅行でシンガポールへ来た時に気がついたことだったんだけどね。
その時は彼女のシンガポール航空のスチワーデスの制服を、仕立て屋で誂えさせたりしたものだ。
シンガポール伊勢丹で小さな花がたくさんプリントされたスカートを彼女に買ったりした。
ちゃんとしたホテルに泊まり、タクシーで移動をして、自分には外国製の万年筆を記念に買い、帰りには一人三本の洋酒を買うのが定番だった。
2人の関係にちょっとヒビが入ったころ、タイのパタヤビーチにツアーで行き、ロイヤルクリフビーチに泊まって、年越しのパーティに出た。
ただ僕は、大晦日の昼にパタヤの海岸沿いを歩き、安っぽいホテルのバーでビールを飲んだ。
そこの従業員が、「今夜のパーティにおいでよ」と、僕を誘ってくれていた。
いいホテルの豪華なパーティに参加していながら、僕の心はあの安ホテルに飛んでいた。
彼女とバンコクのオリエンタルホテル、マニラのマニラホテル、香港のペニンシュラホテルでお茶をしていたことがあったね。
そうなると、シンガポールでは当然「ラッフルズホテル」となる。
でも、僕はラッフルズには、このとき、入る気分にならなかった。
長い旅を続けて、すっかり旅に対する感覚が変化していたからね。
【写真】ラッフルズホテル
【旅行哲学】長期旅行を続けると貧乏が身体に見についちゃうのかな(笑)。