(新鑑真号にて)日本人旅行者分類、タイプT−3 カメラマン

T−3というのは、その僕の分類で「(自称)カメラマン」となっている。
カメラマンの場合は、カメラさえ持っていれば誰でもカメラマンだと言える。
また、持っているカメラが必ずしも高価なものである必要もない。
カメラマンが本物かどうかという話になると、撮った写真でお金を稼げるかどうか、そこにかかっているだろう。
でもまあ、安宿に泊まって、長期海外旅行をしているような人間に、まともなカメラマンはいない。
でも特に問題になるようなことはないので、深く考えず、適当に受け流せばいいだけの、無害なタイプに当たるんだね。
また、カメラマンという場合は、一つの特徴があることを付け加えておこう。
それは、カメラを利用して、人と話すことが出来るってことだよね。
カメラマンがカメラを持っていないと、それは普通の気の弱い個性のない「ありふれた日本人」だ。
しかし、ありふれた日本人がカメラを持つと、カメラマンに変身し、他の人とコミュニケートするようになる。
逆に言うと、カメラを持つことで、自分をカメラマンという特別な立場において、その立場で他人とつながることが可能となるわけだね。
だから、海外で出会う自称カメラマンは、自分から積極的に人に話しかけてくる。
ただ、カメラを隠してしまうと、カメラマンではなくなってしまうので、急に無口になるところが面白いね。
というわけで、この一眼レフカメラを手にした日本人男性は、船の甲板上で、パチパチパチリと、これ見よがしに、カメラのシャッターを切り続けている。
そして、僕の写真をとってもいいか、声をかけてきたわけだ。
そうそう思い起こせば、僕も世界のあちこちで写真を撮られてきたものだ。
一つ強く記憶に残っているのが、1988年にイタリアのジェノバ駅のカフェテリアで、日本人のカップルに会った時。
ちょっと話をしたら、彼らはマスコミ関係の不倫カップルのようだった。
それで、世間話をしていたら、どうやら僕が、赤軍派の幹部だと誤解したようで、さっと写真を撮られてしまったことがある。
この時期、ソウルオリンピック直前だったので、破壊活動で日本の過激派がヨーロッパをうろついているという噂があったようだからね。
写真を撮った彼は、日本に帰国後、過激派のリストと僕の写真を照らし合わせたろうが、残念ながら、僕は、過激派ではなくて世界旅行者先生様だった(笑)。
でもそのときの記憶があるなら、今では結構出世しているはずだから、僕に雑誌のコラムでも頼んでくれればいいのにね。
恥ずかしがらずに、どんどん連絡をくれてかまわないんですからね♪
ま、ごく普通に旅行者同士で写真を取られることは、これはだれにでもあるよね。
しかし、ただ世界一周旅行をしていたときは、日本に住所がなかったし、別に写真がほしくもなかったので、「送り先がないのでいいですよ」と、さわやかに別れてきたものだ。
まあ、正直、写真の送り先なんか、知らせない方がいいんだよ。
その理由は、一つには、住所や電話番号を知らせると、あとあと面倒が起きる可能性があること。
また、旅先で知り合った人から連絡があっても、日本で再会しても話をすることもないので、連絡先を知ってても意味がないってことだけどさ。
もう一つは、「写真を送ります」と言う人は、だいたい写真なんか送ってこないものなんだよ(笑)。
でも、最初から送り先を教えないで置けば、「あの人はひょっとしたら、住所を教えておけば写真を送ってくれるような誠実な人だったかもしれないなー」と、いい想い出のままでいられるってわけだ。
ま、住所を教えていたら、絶対に写真を送ってはこないんだけどね。
僕は写真を取られること自体は、別にどうでもいいので、いくらでも写真は取らせてあげる。
そこで、カメラマンには、「どーぞ、どーぞ」と、写真を撮ることを許可して、海を見る世界旅行者というポーズを取ってあげた。
ついでに、カメラマンに僕のコンタックスを渡して、自分の写真を撮ってもらう。
普通だと、一人の人には一枚しか頼まない。
というのは、写真を撮るのが下手な人や、それだけならいいのだが、わざと失敗した写真を撮る人間がいるからなんだよ。
これは、どうやら日本人の特徴のようで、わざと手ブレを起こしたり、フレームをずらしたりする日本人は確かに多い。
ペルーのチチカカ湖畔の町、プーノの船着場で出合って、一緒のチチカカ湖ツアーに参加したアルゼンチン人の夫婦は、僕が写真を取ってあげようと申し出ると、「この前の日本人は二人の写真の片方だけしか写さなかった事があるのよ」と言っていたくらい、よくあることなんだ。
日本人に写真を撮るように頼むと、わざと失敗写真を取ることが外国でも知れわたっているんだよ。
これでも、日本人は、表面は親切そうに見えていながら、実際は、底意地の悪い、陰険な人間が多いってわかるね(涙)。
カメラマンについてはこれからも、話をすることがあるだろうが、船上のカメラマンの話はこれでオワリ。
世界旅行者海外説教旅の第18話日本人旅行者・タイプ3(T−3)との出会いから。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20060922