つうちゃん食堂@プノンペン/カンボジア

ホーチミンシティ(サイゴン)からプノンペンへ着いたその夜。
キャピタルホテルのレストランで、大いに盛り上がり(この内容はまだヒミツです)、そのあと1人でまたビールを飲みなおしていたとき、なんだかわけのわからない変に陽気な日本人の中年男性が数人、レストランに入ってきた。
そして、テーブルに将棋板を置いて、将棋を打ち始める。
どう考えても、旅行者ではない。
また、現地駐在の商社マンでも、日本大使館の職員でもない。
いやに服装がみすぼらしかったからね…。
なんなんだろうなーという疑問が僕の心の中に溜まったままだ。
世界各地で日本人宿を見てきた世界旅行者である僕は、プノンペンに住み着いている人間たちだろうと見当をつける。
翌日自転車を借りて、うろうろし始めた時、キャピタルホテルと同じ通りに「つうちゃん食堂」と日本語で書いてある安っぽい食堂を発見する。
「つうちゃん(TWO CHAN)食堂」 107 street NO.246
当然すぐに自転車を店の前に止めて、食堂へ入る。
すると、小さなテーブルがいくつも並んでいて、静かな日本人男性が2人、別々に座っていた。
メニューをもらうと、ちゃんと日本語で書いてある。
マーボ豆腐定食(1.5ドル)にアンコールビール(6000リエル)を頼む。
1ドルは4000リエルと計算するので、合計3ドル(12000リエル)になった。
ただなんとなく雰囲気が違う。
僕のように世界各地を歩き回って、片っ端から日本人に合ってきた人間ならば、どんな日本人にも話しかけられるし、話を合わせて盛り上げて、相手の情報を得ることができる。
それは、海外で出会う日本人が旅行者であれ、現地に住んでいる人であれ、基本的には日本人と話したい気持ちを持っているからなんだよ。
ところが、どうも雰囲気が僕を拒絶しているんだ…。
それは敏感に感じたので、僕は話しかけることもしなかった。
ちょっと不思議な感じがしたね。
その夜、またキャピタルレストランに入っていくと、見知らぬ若者から「有名なみどりのくつしたさんですか、光栄です。お話できますか?」と話しかけられた。
彼は、日本の有名大学生だったが、エバー航空を利用して、台湾で2泊して、ホーチミンシティへ入り、メコンデルタの国境越えツアーでプノンペンへ入ったのだそうだ。
「僕の名前知ってるの?」と聞くと、「世界旅行者の西本さんのことは、ちょっとでも旅行が好きならば、みんな知ってますよ。特に『間違いだらけの海外個人旅行』は最高でしたね♪昨夜からみどさんが来たというので、プノンペン中がお祭り状態ですよ!」と、話をする。
彼をわかりやすく、「みどファン3号」と呼ぼう。
なるほど、僕がプノンペンへ来たという噂は、すでにカンボジア中というのは大げさだが、プノンペン中に広まっていたのだ。
それで、昨日レストランでただ話をしていただけなのに「みどくつさんですね!」と声をかけてきたやつがいたのか…。
ひょっとすると、あの中年日本人軍団も、僕が来たのを知って見に来たのかもしれないな…。
「うーん…」と考え込む。
そこへ、国境からずっと一緒で、昨日も話をしていたKくん(ココナツちゃん)がやってきた。
3人で一緒のテーブルでビールを飲みながら、互いに今日の出来事を交換する。
ココナツちゃんは、プノンペンが最初なので、あちこち歩き回っていたので、情報を交換する。
これが本物の旅行者同士の旅のやり方だ。
1人で動き回っていろんな情報を入手して、それを交換する。
常に誰かと一緒に動き回っていては、全く面白くないからね。
僕は、サダゲストハウスは馬鹿ばかりだという情報、プノンペンの中央郵便局ネタ、それから、つうちゃん食堂の話をする。
「昨夜ここへ来て将棋してた中年男性、つうちゃん食堂の連中がわからないんだけど、あれはどんな人たちなの?」と聞いてみる。
すると、ココナツちゃんが話し始めた。
「僕が入手した情報では、あの人たちは日本の公安警察みたいですよ。なんでも、赤軍派がカンボジアに潜入していて、それを調べているそうです」
「また、カンボジアの売春、麻薬組織を調べているFBIもCIAも混じってるらしいです」
うーん。
よくわからんな…。
旅先ではさまざまな情報が手に入るが、それがどれほど確かかわからない。
半分程度は信じられるかと思うと、全部信じられない。
でも、旅先の話は、できるだけ変わった、不思議なもののほうがいい。
そちらの方が面白い。
面白ければそれでいいじゃないか。
というわけで、僕はつうちゃん食堂で見た日本人中年男性軍団が公安なのか、CIAなのか、はたまたイスラエルのヒミツ情報機関モサドのエージェントなのか、結論を出さないままここに書いておきます。
ところで、帰国後、「世界旅行者協会」掲示版で「プリズナーインプノンペン(P.I.P.)」という小説を紹介されて、読んでみた。
その中には、プノンペンに沈没してノンビリ過ごしている日本人中年男性の姿が描かれていたから、ただの沈没者なのかもしれない。
でもそれならば、もっと気の利いた生活をしているような気がするけどね…。
誰か情報があれば教えてくださいね。
【写真】つうちゃん食堂
【旅行哲学】旅先ではいろんな、わけのわからない話を聞くね。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20050507
