「硫黄島からの手紙/Letters from Iwo Jima(2006)」&「父親たちの星条旗/Flags of Our Fathers(2006)」
ほとんどの人は理解できないだろうが、この映画は先に公開された「父親たちの星条旗」と同様に、戦争のことを描いているわけではない。
クリントイーストウッドのすべての映画と同様に、「人生のむなしさ」を語っている。
しかし、おそらくは、日本では「反戦映画」とのレッテルを貼られるだろう。
日本人俳優のコメントもそういう流れだ。
また、日本の知的レベルの低いメディアも、そういう単純な方向に行くに決まっている。
それは違うんだよ。
例えば、バロン西が負傷した米兵を治療させたのは、人道的な精神からではない。
彼はロサンジェルスオリンピックで金メダルを取ったときの楽しかった時を、英語を話して思い出すために、米兵を利用しただけだ。
また、「父親たちの星条旗」で、インディアンが酒におぼれるのは、良心の呵責からではない。
彼はもともと酒飲みで、弱い性格だったんだよ。
つまり「インディアンは性格が弱くて、酒飲みだ」と言ってるわけだ。
そして、歴史的な事実として、インディアンとは、そういうものだった。
英雄に祭り上げられても、それとは関係なく、彼は彼の人生を生きる。
それをそのまま描いて、「人生はそういうものだ」と、クリントイーストウッドは言う。
それだけの映画なんだ。
戦場では生き残るべき人が簡単に死に、勇敢な人があっけなく犠牲になる。
生き延びたと思った人が殺され、死を覚悟した人が生き残る。
運命の選択には感情がなく、無作為だ。
なんの理屈もない、ただの偶然だ。
人生もまた、そういうものだ。
だからこそ、心に深く残る。
この映画を見て涙は出ない。
そんな安っぽい映画じゃない。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20070419#p1