《イスタンブールの朝、ジェスチャーでコンドームを買うとイボイボ付きで…》

2003年、僕は大連に旅に出た。
大連に行くなら昔の「大和ホテル」、現在の「大連賓館」に泊まらないと話にならない。
大連賓館は映画「ラストエンペラー」でも使われた有名ホテルなので、当然の話だがホテルでは英語が通じた。
大連駅の窓口で自分で並んで切符を買って、夜行寝台車でハルビンへと向かう。
大連からの夜行寝台列車は、早朝ハルピン着。
1909年10月26日、伊藤博文が、朝鮮独立の志士、安重根に一番ホームで射殺されたハルピン駅に降り立って、駅前に出る。
ハルピンの駅を出たところにそびえたつのが、龍門大廈だ。
龍門大廈も満州国時代の「大和ホテル」なのだが、その面影はどこにもない。
ただ単にヌポーッと駅前に立っていて、見るからに、ビジネスホテルの感じがして、ほんとに興ざめだね(大和ホテル時代の建物が裏にあってレストランをやってますよ)。
しかも目の前のホテルまで、たどりつくのが大変だったよ。
実は、ハルビン駅前に地下商店街があってその通路を通れば道を渡るのは簡単。
だが、朝が早すぎて、地下街が閉まっていて地上を通るしかない。
地上には横断歩道も何もなくて、駅前の駐車場を抜けて、歩道と車道を別けるフェンスをよじ登り、車の間をすり抜けて、向う側まで行くんだ。
龍門大廈へ入ったら、受付にいた3人の若い女の子たちが、1人も英語をしゃべれない。
バックパックを背負ってきた僕を見て「この変な人、なにをしに来たのかしら?」と、考えている風だ。
そこで、両手を合わせてほっぺに当て、首をかしげて眠るジェスチャーをした。
すると「なーんだこの人は泊まりたいんだ」と、わかってくれて、また掃除中の部屋を僕にくれた。
ホテルに入っていって眠るジェスチャーをすれば、泊まりたいんだとわかるものだよね。
もちろんこのジェスチャーは、ホテルに泊まる場合だけではなくて、寝台車を予約する時も使える。
バルト三国ラトビアの首都リガ、ここの鉄道駅でも英語が全く通じなかった。
時刻表は一応あったので、それを見て隣国リトアニアの首都ビリニュスへの列車の切符を買いに窓口へ。
窓口のおばさんは、英語がわからない。
僕は寝台の切符が欲しいが、その気持ちがつたわからないと本当に困る。
やはり、眠るジェスチャーをしたが、そのときは目を閉じて口を大きく開けたり閉じたりと、何度も繰り返したよ。
ホテルの場合は部屋にはベッドがあるに決まってる。
が、列車には寝台じゃない車両もあるんだからね。
海外旅行なんていっても、やることは「泊まって、食って、観光する」と決まっている。
だから、言葉なんかしゃべれなくても、なんとかなるものだ。
ただナイロビで防虫スプレーを買いに行ったときはちょっと困った。
僕はかなり英単語を覚えているので、薬局に行って、カウンターでなんとなく頭に浮かんだ「インセクティチュード」という言葉を使った。
しかし、これは間違いだったみたいで通じない。
実際は殺虫剤は「インセクティサイド」だったんだ。
でも、もちろんそんな難しい言葉を使う必要はなくって、普通に「インセクトキラー」とか「モスキートスプレー」とか適当に言えば通じたはずなんだけどさ。
ただそのときはなにか慌ててしまって、僕はジェスチャーを始めた。
薬局の中で、ブーンと蚊が飛ぶところをやって、スプレーをかける形をやって、それで蚊が死んでしまうところまでやったんだ。
するともちろん、「オー、ユーウォントモスキートスプレイ♪」と、笑いながら品物を出してくれたよ。
その場もなごんだし、ナイロビでのいい想い出だね。
あと懐かしく思い出すのが、イスタンブールのこと。
1996年に東欧を縦断してイスタンブールに入って、昔の日本人バックパッカー定番宿「モーラ」に行った。
モーラはこぎれいな中級ホテルに変わっていた。
が、マネージャーを口説き落として、一泊35ドルを20ドルに値切って泊まった。
そのころ日本人が集まっていたのが「アヤソフィア」という安宿。
町を歩いているとなんとなく日本人旅行者と知り合って、アヤソフィアのロビーで日本人旅行者諸君と話をしていた。
食事を一緒にすることになり、5、6人まとまって電車通りに面した「ジャン(CAN)レストラン」へ行く。
イスタンブールは旅人の集まるところだ。
アジアを横断して来た旅行者、ヨーロッパからアジアへ向かう人、中近東からやってきた人、僕のように東欧を縦断してきた旅人、またその逆にこれから行こうとする人が集まる。
だから、みんなで旅行の話を始めたら途切れることがない。
大いに盛り上がっていると、もちろん他の日本人旅行者もレストランへ入ってくる。
どんどん声をかけて片っ端から仲間に入れて、10人以上に膨れ上がりさらに盛り上がる。
ま、こういうことを毎日やってたんだけどね。
その時に、ユースホステルに泊まっていたチョー美人日本人女子大生さんと知り合った。
世界旅行者はエッチネタを飛ばすのは上手なので、どんどんそっちの方の話になって行く。
「人生ってさ、結局は、セックスなんだよね!」と、断言した。
頭のいい人はエッチが好きなものだ。
だから、相手が一流大学の学生なら、絶対に意見は合う。
夜遅くまで、ジャンレストランが閉店で追い出されても、まだ話し足りない。
僕の泊まっていたモーラのレストランで、この有名大学美人女子大生さんと話を続ける。
夜もふけてきて、だんだんと雰囲気がよくなってくる。
そうなると、どうしてもエッチしてあげなければならない感じになってしまった。
僕は口だけの人間ではないのだから、エッチしてあげてもいいと思った。
しかしなぜかその時、コンドームを持ってなかったんだ。
僕は「間違いだらけの海外個人旅行」にコンドームが必要だと書いている。
「大人の海外個人旅行」の旅の荷物リストでもコンドームをイヤに強調している。
その理由は、このときにコンドームがないことでホント困ったからなんだよ。
なにしろ僕の書くことは、すべて体験に基づいた根拠があるんだから。
ところで、いくら外見が真面目そうな女子大生さんでも、裏はどうかわからない。
早く言うと、僕の知っている限りでは、頭がよくて、美人で、真面目な女性ほどセックスに積極的なものなんだよ。
だからどうしてもコンドームが必要だった。
しかし、手許にコンドームがない。
そこで、とうとう、その夜は何もせずに女子大生さんを帰してしまったんだ…。
女の子の気持ちに応えられないなんて、男性として本当に恥ずかしく思った。
しかし、また翌日の待ち合わせを約束している。
そして、お互いに次はきっちりとエッチをするという、了解ができている。
翌朝早く、急いで薬局を捜して歩いた。
歴史的なスルタンアフメット地区からシルケジ駅へ下っていく坂のところで、薬局を見つける。
入っていって、「コンドームください」と英語で言う。
すると、カウンターのかわいい女の子が理解できなかったみたいで、首をかしげた。
僕は「トルコではコンドームという言葉は通じないのか、トルコはドイツと関係が深いからドイツ語なのかも…」と思う。
でも、どうしてもコンドームは必要だ。
そこで、ジェスチャーでコンドームを表現しようと考えた。
コンドームの箱を宙に描いて、コンドームのパッケージを取り出して、パッケージを破り、パンツを脱いで、チンコを指差し、チンコにコンドームを装着するジェスチャーをやって、それが欲しいのだとやった。
念のために書いておきますが、実際は、パンツは脱いでませんよ。
パンツを脱ぐジェスチャーをしただけです。
すると、女の子は「オー、ユーウォントコンドーム!」と、わかってくれたね。
彼女は中年の日本人のおじさんが朝早くからコンドームを買いにくるなんていう経験がなかったので、ビックリしていただけみたいだね。
ただ、急いでホテルへ戻って、パッケージを開けてみると、普通のコンドームではなくてイボイボ付きのかなり激しいタイプだったね。
こんなイボイボつきのコンドームを使ったら、あの美人女子大生さんは、なんと言うだろう。
と思わないこともなかったが、そこまでは責任もてないよ。
僕が悪いんじゃなくて、薬局の店員がくれたんだから。
まあ、トルコではイボイボつきのコンドームが流行しているのでしょう。
これもいい思い出になると、考え直した。
そしてその夜、女子大生さんとジャンレストランで再会した世界旅行者は…。
ところで、この話は「海外旅行で英語が通じなくても、ジェスチャーでなんとでもなる」というテーマなので、そのコンドームがどう使われたかについては、次の本を期待してください。
【写真】コンドームを買った翌朝の世界旅行者
【旅行哲学】とにかくコンドームを用意しておいた方がいい。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20060903
